将棋の話11 ~瀬川戦3局と4局

瀬川晶司さんのプロ編入試験は第4局まで進みました。
久保利明八段には惜敗。
中井広恵女流六段には受けきり勝ち。
二勝二敗と五分の星勘定ですが、
実質は五分以上の成績だと思います。

一般的な先後の勝率は先手55%後手45%で先手有利。
加えて瀬川さんの棋風は攻めっ気100%の居飛車党ですから、
4局とも後手番だったために
自分のペースで指せない苦手な展開を強いられた。
この条件のもとで二勝したのは大したものです。
一勝三敗でも実質は勝敗五分とみてよい。

中井広恵さんは男子プロ四段以上の実力は持っている人なので、
瀬川さんは六段ぐらいの力は十分もっているということかもしれません。

2局ともプロ側も対瀬川戦を意識して作戦を練ってきたように思います。
プロ棋士にとって瀬川さんはすでにそれほどの人なのだということ。

第3局の久保利明八段は、
瀬川さんが最新の定跡形に明るいと見て、
序盤から力戦形(定跡を外した戦形)を志向したように思う。
7筋の歩を突き出して三間飛車を見せ
すかさず後手角替わりにきた角を
飛車で取って向飛車にするという珍しい指し方。
先後ともに筋違い角になり、
ほとんど見たこともない戦いになった。

これが先手久保八段の対瀬川戦の対策だったように思う。

最近気づいたことですが、
久保八段のこの指し方は全く前例がないわけではないようです。
早指しテレビ対局「銀河戦」の久保利明八段対豊川孝弘六段戦が、
同じ出だしだった。

先手久保八段が三手目で歩を伸ばして石田流の意思表示をすると、
後手豊川六段がすかさず△8八角成とし、それを▲同飛ととって、
△4五角の筋違い角に▲7六角と筋違い角で受けた。
ここまで同じ展開です。
その後豊川六段が違う対応をしたので違う将棋になった。

違いは後手瀬川さんが早い段階でタイミングよく△5四角と引いて
再度角交換をしたところから。
そうやって定跡を外した手順ながら
バランスのとれた駒組みに進んでいった。
力戦を仕掛けたい久保八段はそこから穴熊に囲うという、
さらに瀬川さんの意表をつく作戦にでた。
序盤の攻防が緻密になった現代将棋の
最先端をゆく気鋭の棋士同士の対局だからこそ
このような将棋になったという感じがしました。

第4局の中井女流六段戦も興味深かった。
瀬川さんが横歩取り8五飛戦法の最新形に精通していると読んで、
中井女流はそれを外した定跡形を採用したような気がします。
攻めっ気100%の瀬川さんの上をいく
「攻めっ気120%」「女版塚田泰明」みたいな中井さんだから、
ペースを瀬川さんに握られると不利と考えたのか、
とにかく攻め続けた印象です。

私が素人へぼ棋士だからかもしれませんが
先手番の身になって7六にある後手の歩が気になりつづけた。
やっかいな歩だなと。
どのタイミングでこの歩を掃おうか、
とそれがずっとひっかかっていた。
結果的にこの歩のために玉の逃げ場がなく、
攻めが切れると即負けということになった気がする。
攻守のバランスも大事ですね。

瀬川さんは中井女流に勝った後、
はっきり負けを感じた局面があった、
負けた将棋だった、というようなことを言っていたが、
将棋ソフトの棋譜解析ではそんな結果はでなかった。
参考までに書きますと、

将棋ソフトのチャンピオン「激指4」は、

先手・中井女流:疑問手5(敗着▲3四馬・99手目)
後手・瀬川さん:悪手1疑問手1

と判定し、悪手と疑問手後の数手「先手有利」と形勢判断したが、
「先手優勢」「先手勝勢」という判定はなかった。

悪手は森下卓九段の指摘した通りの手。
86手目の△4九角です。

当然△4七角と指すべきだった。
こちらのほうが先手の馬・飛車、後手の角・銀が交換になって、
先手玉が4七に裸ででてくる危険な形になる。
以下持ち駒の飛車角二枚をうまく使って
先手玉に必死をかけることができそうな気もする。
一枚渡したら詰みますよ、
として先手の寄せを制限することができそうな予感がある。

疑問手は96手目の△5二玉で、
激指くんは△5一玉が勝ると読んだようですが、
私にはよく分かりません。

「激指」より弱い「東大将棋」は、

先手・中井女流:悪手5、疑問手1、逸機1
後手・瀬川さん:悪手2、疑問手2、逸機1

と判定し形勢判断の曲線は激指とほとんど同じ。

悪手判定2は

84手目△8五金
(候補手△4七角)
86手目△4九角
(候補手△4七角)

疑問手2は

68手目△8五飛
(候補手△5五桂)
120手目△3四歩
(候補手△3二玉)

だった。

将棋ソフトの棋譜解析は所詮将棋ソフトがしたものだから、
当てにならないところもありますが、
こう揃って強いソフトが瀬川さん会心譜的判定をすると、
信憑性が高くなってくる。

小さなミスを大きく感じるのは才能でもあり短所でもある。

その繊細さをうまく活かせば、
真似できない強さに変わってくるかもしれません。
前回の対局でまずかったところをひとつずつ補正して
次に活かすということをしていますね瀬川さん。

1局ごとによくなっている。

第5局が益々楽しみになってきます。

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